2024.12.17

業界よもやま話

欧州バッテリー規則発行に伴う影響

近年、バッテリーを搭載する機器は増加傾向にあります。従来のバッテリー駆動製品でも、容量・出力アップなどを背景に、使用する電池の見直しを行う事例が増えています。

しかし、電池の検討には、安全上の懸念がつきものです。携帯電話やモバイルバッテリーなど、電池搭載製品を火元とする火災は後を絶ちません。消防庁も注意を呼びかけています。

特に、充電式の二次電池として主流のリチウムイオン電池は、容積あたりのエネルギー密度が高く、小型でハイパワーである一方、熱や衝撃による発火リスクが他の電池より高いことが知られています。

また、材料となるレアメタルの採掘に伴う労働権問題や、使用済みバッテリーの廃棄による環境汚染・健康被害など、資材調達や生産に関しても、幅広い視野での安全配慮が求められます。

電池搭載製品に必要な認証とは?

一般的に、二次電池搭載製品を新規開発するにあたっては、以下の規格をクリアすることが求められます。

  1. IEC 62133-2: IEC(国際電気標準会議)の策定したポータブル機器向け組み込み式二次電池に関する安全規格
  2. IEC 62619: 産業用据え置き型二次電池に関する安全規格
  3. UN 38.3: 国連の策定したリチウムイオン電池の国際輸送に関する安全規格
  4. その他、用途・仕向け地別で必要な認証

今回は、上記の仕向け地別認証の一つである「欧州バッテリー規則」について解説します。

欧州バッテリー規則の概要

欧州バッテリー規則とは、EV車の普及など今後の電池流通量の急増を見込んで、2023年8月に発行された新たな規則です。機器に内蔵されているものを含め、EU圏内に流通するほぼ全ての電池に対し、資材調達から生産、リサイクルまで一連の流れを監視するための規定を設けています。

具体的な例としては、カーボンフットプリントの申告や調達先の適正評価などがあり、今後も段階的に要求事項が追加される予定です。

なお、欧州バッテリー規則は、EUが2019年に打ち出した欧州グリーンディール政策に紐づいた施策です。この政策では、2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目標の一つとしており、モノづくりに限らずヨーロッパ社会全体が、今後も環境保護、循環型経済への関心を高く維持していくと考えられます。

日本企業への影響

今後、EU圏内で電池や充電式製品を販売するには、欧州バッテリー規則に則った対応が必須となります。

製品の上市を予定している事業者は、EU内の代理機関(TUV SUDなど)に対する各種レポート提出・試験などを経てEU適合宣言書を受領し、CEマーク記載のラベルを貼付することで、初めて正式な市場流通が可能になります。

そのため、各事業者は今後、生産に係るカーボンフットプリントや各種材料のリサイクル率データ、調達先の適正評価方針など、認証に必要な情報を取得・保管し、提供できる体制を整えておく必要があります。

前述の通り、規則の要件は段階的に追加される予定のため、EU市場向けに製品展開を行う場合は、最新の法規適用スケジュールに注意する必要があります。

また、仮に欧州展開の予定が当面ない場合でも、決して油断はできません。今回の欧州バッテリー規則を皮切りに、各地域で同様の規則が次々と施行される可能性もあるためです。

事実、米国や中国をはじめ世界各国も、EU同様カーボンニュートラルを長期目標とした政策を展開しています。欧州バッテリー規則への知見を持つことで、今後の地域ごとの認証取得を効率的に進められる可能性もあります。

ミカサ商事では、セル単体から保護回路・制御回路を搭載した電池パックまで、幅広い形式の電池を取り扱っております。 完成品・カスタム品を問わず、認証取得のサポートを含めて対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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